« 私のチュン 連載16 | トップページ | 私のチュン 連載15 »

私のチュン 連載21

私のチュン


八幡自然塾日本の鳥旅先の鳥旅先の花木旅先の蝶鳥紀行好酉の世界

2006/12/16
 チュンの感情表現 《不安・恐怖》 戻る次へ


 不安感とか恐怖感というものは、色々と状況によって異なり、その表現方法も変わってくるものだ。 チュンの知らない所、例えば、隣の部屋へ連れて行ったときなど、怖がっているなとすぐ分かったものだった。 ボディーランゲージ body language が人間と共通かも知れない。


 ボディーランゲージというのは、ジェスチャー gesture のように演技・演出といったテクニックでもって他者に伝える表現手段ではなく、無意識下のものだから、騙す・騙されるという関係が生じることはない。 正直に現実を表現していると言えよう。


 何の戦う武器を持たない小鳥に対して、突然目の前にネコとか犬といった捕食者が現れたとする、または、誰かにびっくりさせられたとする、要するに、何の身構えも出来ないまま恐怖に遭遇したりする、と仮定する。

 こういう状況で考えられる彼らのボディーランゲージというか行動は、それこそ飛び上がって、めくらめっぽう逃げ出すのではないか。

 腰を抜かすようなこともあろう。 また、気絶したり、ショック死したりすることもあるに違いない。 いづれにしろ、一瞬身構えて、戦うという選択肢はなかろう。






§ チュンは小心者?
 チュンについて言えば、その様な驚かせ方をしたことがないから分からないが、自分で新聞紙の上を歩いていて、突然、わっと飛び上がって驚くことがある。

 何を観てびっくりしているのかよく分からないが、目玉模様でも見つけたのかもしれない。 それが十センチほど歩いたかと思うと、また、わっと驚いて飛び上がったりする。

 だからといって、チュンのことを小心者とは言えない筈である。 人間で言うならば、何も知らずに道を歩いていて、大きな蛇でも踏みそうになったようなものであろう。 それに、チュンは裸足である。 尚更のこと、びっくりするのは仕方がない。


 人間の場合、こんな怖い目に何度も出会えば、外にも出られまい。 ところがチュンの偉いところは、それでめげる事はない。 わっ、ピョン、わっ、ピョンと飛び跳ねながらも目的地に辿り着くからえらいものだ。






§ 本当に怖いこと
 チュンに限らず本当に怖いと思うことは、ある恐怖が持続する状況の場合である。 根源たる恐怖の度合いの大小ではない。 小さな恐怖でもそれがじわじわと続く状況こそ本当に怖いのである。

 捕食者が突然目の前に現れた、などという状況は、恐怖の度合いは最大かもしれないが、捕まるにせよ、逃げるにせよ、ほんの一瞬のことである。

 一方、恐怖の度合いが低くても、その恐怖から逃げ出すにも逃げ出せない、立ち向かうにも立ち向かえない、死にたくても死ねない、また、それが限りなく続くかも知れないという状況こそ怖いのである。

 これは、まぁ、私の閉所恐怖症からくる思いかもしれないが、少なくともチュンには分かって貰えるのではないか。






§§ 不安感の表現
 チュンが未だ経験したことがない知らない場所、例えば昔のことであるが、隣の部屋へ連れて行ったときなど、怖がっているなとすぐ分かった。

 得たいの知れないところに居るという感覚が、びっくりするような恐怖ではないが、じわじわと襲って来たことであろう。

 これが私の言うところの、恐怖の度合いは低いが持続する恐怖である。 チュンにとっても、私がその立場に立っても、出来ることなら避けたい怖さである。

 チュンは、口を開けたまま落ち着きがなく、頭を少し斜め上方に向けて腰を落とし、どこか避難場所でも探すように、きょろきょろと見回しながら、右に と・と・と、と動いてみたり、左に動いてみたり、くるりと回ってみたりする。 気が動転していて、どうしたらよいのか自分でも分からない様子である。

 もし、どこか身を隠せるような場所が見つかれば、一番に隠れたい。 ところが、初めての場所であるから、眼に入るもの全てが恐ろしく見えたに違いない、ただ、ウロウロするばかりである。

 ときに脱糞したりするから、かわいそうで見ていられない。 すぐ元の場所に戻さざるを得なかった。


 このような見知らぬ場所にいるという恐怖感や不安感は、チュンの目が悪くなった今では、ほとんどないといってよい。 チュンが若かりし頃のことである。

 だから、口を開けて怖がる姿は、もう何年も見ていないことになるが基本的なボディーランゲージであることには間違いない。





 当時は、チュンが何を怖がるかも分からなかった。 良かれと思ってしたことが、結果的に怖がらせていたようなものである。

 新しい鳥篭を買ってきたときも、喜ぶかと思って中へ入れたら、たちまち口あんぐりの恐怖心を示したのである。

 この場合も、得たいの知れない中にあって、逃げるに逃げ出せないという、私の一番苦手とするところであるから、今となればチュンの気持ちがよく分かる。 しかし、そのときは気がつかなかった。

 私からすれば、チュンに新居を提供したつもりであるが、チュンにしてみれば、初めて目にした金網の箱であったろう。 ありがたいと思う訳がない。

 それが面白いことに、明るいうちに入れると怖がるが、朝、目覚めたときに新しい鳥篭の中にいるのであれば怖がらないということを聞いたことがあった。

 なるほどと思って、夜、部屋を暗くしてから鳥篭に入れて見た。 そのときは暗かったので何も見えなかったのであろう、チュンは怖がらなかったし、また、怖がる理由もない。

 そして、翌朝になって様子を確かめに行くと、見事にチュンは騙されて、何ごともなかったように止まり木の最上段でくつろいでいた。

 これでは、チュンが馬鹿のように見えるがそうでもなかろう。 チュンが目覚めるまでの長い時間の経過の中で、怖いことが何も起こらなかったから、逆に安全であるということを感じ取ったに違いない。

 チュンには何も見えはしなかったが、眠りつつも時間の経過を理解していたということである。 目覚めて、いま居る場所が極めて安全であったことに気がついた。

 その気付きが大切である。 それを空想のまま、いつまでも怖がる方がおかしいのではないか。

 確かに私なら怖くてその夜は眠れなかったろうし、気絶していたかもしれない。 しかし、よく考えてみれば、夜の闇を怖がるというのは人間ぐらいではなかろうか。

 夜の闇自体は怖いことでも何でもない。 そして、一晩何も起こらなければ、何事もないと考えるチュンの方がまともであろう。 現に、赤ちゃんを見ていても、夜を怖がる気配は全くない。

 大きくなってから、怪談話を聞いたり見たりするから怖いのである。 あくまで後天的な想像の世界のことである。 それを怖がるようでは、チュンが聞いたら、それこそ馬鹿にされるであろう。





余談
 私は夜の闇の高野山を独りで車を走らせたことがある。 当時、竜神スカイラインが開通したばかりで、竜神温泉まで鮎釣りに行くのに通行料金をケチったのである。 夜零時以降は無料になるので、その時間帯を目指していった。 (最近は無料になったと聞く)

 高野山の町外れから、竜神スカイラインに乗ってしばらく行ったところで、提灯を下げた巡礼者のような姿をしていたと思うが、数人で一列縦隊で歩いて来るのが眼に入った。 それが方向が逆であるから、あっという間にすれ違った。

 こんな真夜中に、それも町外れである。 何か変だなと思ってバックミラーで確認するが、もはや人影はなかったのである。 背中に冷たいものが走った。








§§ 鳥も暑いときには口を開ける?
 私たち人間は暑いときには汗をかく。 馬も汗をかくのは見たことがるから断言できる。 カバは赤い血のような汗をかくというが、見たことはないから何ともいえない。

 犬が口を開けて舌をだらりと垂らしながらハァーハァーしている姿はよく見かけたことでしょう。 そして、犬には汗腺がないから、舌がその役目を果たしているということもご存知のことでしょう。

 ネコも汗腺がないが、犬のように口を開けてハァーハァーはしない。 これは、舌で毛繕いするときに唾液でその毛を濡らしているかららしい。

 どちらも水分が蒸発する際に気化熱を奪うという物理反応を利用しているものであるが、ここでは、その理屈を考える必要はない。 ただ単に、体温の上昇を抑えたいという彼等の行動は理にかなっている、ということに尽きる。






§§§ 体温の上昇を抑えたい理由
 体温の上昇を抑えたいのは、理屈などどうでも良い、単に暑いからであるというのが正解であろうが、それでは私の屁理屈が通らない。

 身体の温度上昇を抑える必要があるのは、生命体の根幹である蛋白質が熱に弱いからである。 神経細胞等は四十数度しか耐えられないといわれている。 脳がやられたら生きては行けまい。

 もっとも、下等動物では摂氏百度以上でも耐える蛋白質を持つものが居るそうであるが、このことも、ここでは全く勉強する必要はない。


 そして、体温の上昇を抑える機能を発達させたのは哺乳動物であり、そのために汗腺を持つに到るのであるが、その結果、脳を発達させることが出来たと、そのように言われている。

 要するに、汗腺を持っているのは哺乳動物だけである。  言い換えれば、哺乳動物以外は汗腺を持っていないと言っているのである。

 ところで、犬は哺乳動物ではあるが、汗腺を持っていないという。 ここで、こんがらがってはいけない。 哺乳動物全てが汗腺を持っているとは言っていないのである。 哺乳動物でも汗腺を持っていないものが居てもかまわないということだ。


 そして、ここで大事なことは、犬は汗腺を持っていないが、舌で代用していることに注目していただきたい。 でないと、次に話を進められないのである。






§§§ 鳥類は汗腺を持たない
 哺乳類だけが汗腺を持つのであれば、鳥類は汗腺を持っていないと結論付けることが出来るであろう。

 そして、鳥類もまた高等動物であり、なかなか賢い。 私は見なかったが、犬や猿や鳥たちを知恵比べさせて、誰が賢いか調べる実験をしたらしい。 すると、ある種のオオムが一番であったということだ。 家内がテレビで見たという。

 このように、鳥類も脳を発達させてきたという事実が物語るように、鳥も体温の上昇を抑える工夫をしてきたということである。




その工夫とは
(1) 漂鳥 に代表されるように、避暑・避寒に出かけるのである。
   考えることがえらいではないか、汗腺などというややこしい機能はいらないということだ。 飛ぶという機能を最大限に生かした。

(2) 留鳥 のように定住性の強い鳥は、暑いときには犬と同じように口を開けて体温の上昇を防ぐのである。



 実際に、留鳥であるカラスが夏の暑いときに口を開けてあえいでいる姿をよく見かけることがある。 黒い 羽衣 (うい) のカラスにとっては、夏は苦手に違いない。 見ていても暑苦しい。

 また、ニワトリを飼ったことがある方は、このように口を開けて暑さを凌いでいる姿を見かけたことがあろう。






§§§ 怖いときに口が開くのは何故?
 これについては、さすがの私も知らない。 しかし、それでは、ここまで話を進めて来た私の屁理屈が通らない。 ちゃんとした理屈があるようだ。



 これは誰しも経験してご存知のことと思うが、恐怖体験をしたときの身体の反応は、次の三点セットであろう。

 ① 胸の鼓動が高まり、心拍数が増える
 ② ガタガタと震える
 ② 冷や汗が流れる

 そして、その反応が起きる理由として言われていることであるが、その定説を信じることができれば、恐怖のボディーランゲージとして鳥が口を開ける理由をご理解いただけるであろう。

① 危機から脱出するためには、筋肉など身体の組織に対してエネルギーの補給が必要であろう、それも緊急に。
 そのために、あらかじめ、身体の隅々まで血液が流れるように心臓の馬力を上げて、且つ、心拍数も上げて、一刻でも早く循環させておくのである。 とにかく考えていては遅い、条件反射的にその補給機能が作動するようになっている。


② 自動車のエンジンでも同じだが、温度が低ければ馬力がでない。 かといって、じっとしていては温度は上がらない。 アイドリングが必要である。
 冬の寒いときに身体がガタガタと震えるのも、伊達ではない、身体や筋肉の温度を上げるためである。 暑かろうが寒かろうが、そんなことは考えてられない、とにかく怖いと感じたときに身体を強制的に震えさせて、あらかじめ体温を上げておくのである。


③ ところが体温を上げ過ぎてもいけないことは前述のとおりで、蛋白質がやられてしまう。 その予防のために、あらかじめ汗も流しておくのである。


 何がなんでも緊急だから仕方がない。 良いや悪いをいちいち考えてられない、三点セットの全てを同時に働かせるのである。



 この三点セットは、哺乳類であれ、鳥類であれ同じである。 何しろ生命にかかわることであるからだ。 そして、汗腺を持つ人間だから冷や汗が出るのである。

 まさかここで、ちゃちゃを入れるような暇な人はいないと思うが、冷や汗も汗である。 暑くもないのに汗がでるから冷たく感じるのである。 その暇を利用して、気化熱という物理反応のことを、もう一度復習されたが良い。

 私は未だ見たことがないが、恐怖を目の前にした場合、私の屁理屈から想像するに、犬は舌を出してハァーハァーするだろう。 また、猫は座り込んで毛繕いをするに違いない。


 それで、問題の鳥の場合であるが、もうお分かりのこととは思うが、口を開けるのである。 ただし、犬のように舌をだらりと垂らすような無作法はしない。

 ちなみに私の場合は、冷や汗もかくし、口も開くが、これはこの緊急対応がより強力に機能しているということであろう。 単に、怖がりと思われては困る。






戻る次へ











« 私のチュン 連載16 | トップページ | 私のチュン 連載15 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。