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私のチュン 連載12

私のチュン


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2005/07/22
 チュンの好きな食べもの (1) 戻る次へ


遺伝子のなせるわざ
 チュンが穀類が好きなのは、スズメだから当たり前のようだが、まだ見たこともない、初めて見る筈の、稲穂に反応したことには驚いた。 もちろん、今でも、大好物である。 第一番の好物と言ってよい。 精米した米ではなく、籾殻 (もみがら) つきが最高だ。


 チュンが、我が家に来たのは、巣立ち直後であるから、稲穂はおろか、お米は、見たことも食べたこともないはずだ。 それに田植え前だったから、お米を貯蔵していない限り、有り得ない。 また、スズメがお米を貯蔵するという話も聞いたことがない。


 本能と言ってしまえば、それまでだが、稲穂を見ただけで、家(鳥篭)から飛び出してきた。 本能といえば、我々でもあるはずであるが、これに該当する本能が見つからない。 異性の好みに対する本能であれば、分からなくはない。


 私は、牛肉は好きだが、初めて牛を見て、飛びつきたくなるかどうか、疑問である。 足が四本以上あるものは、本来、好きではないが、エビやシャコが好きというのが、この本能に近いか、と言えば、そうでもないと思う。

 これは、後の生活での学習の結果だろう。 だいいち、シャコを見て、気味が悪いという人もいる。 姿かたちは、決して良くはない。 私が、初めて見たとして、食欲が湧くとは、とても思えない。 だから、生得的なものではない筈だ。






§ チュンは器用
 稲穂から米粒を一粒ずつ、ちぎって、チュンの口元に差し出す。 すると、人差し指と親指で摘まんでいる、その私の指の輪と、丁度直角になるように、頭をひねって、嘴でくわえる。 ぱちっ、と確実に、米粒を挟む手ごたえが伝わってくる。 そのまま、チュンをぶら下げることもできるだろう、と思うほどに、しっかりと、くわえる。 地に生えた稲穂であれば、体重をかけるだけで、容易に喰いちぎることができるものと、想像がつく。 我々がピンセットで、小豆を摘み取るような不安定さは、まったくない。


 私の手からもぎ取るようにして、取って食べ始めるが、その食べ方が、実に器用だ。 籾殻(もみがら)つきだから、さすがに、そのままでは飲み込まない。 嘴と舌を使って、口の中で、小刻みに回転させながら、割り口をさがし、時々、力を込めるのであろう、パリ、パリパリ、と小さな音がする。 最後に、籾殻だけを、器用にポロッと落として終わりだ。 時々、失敗して、両方とも落とすことがあるが、十に一つもない。




イソップ物語は正しくない
 今、思い出したが、イソップ物語に、
 「肉をくわえた犬が、丸木橋を渡っていると、川面に犬の姿が現れた。 自分の姿が写っているとは知らず、敵かと思って、ワンと吠えたらしい。 そうしたら、肉を川の中に落としてしまった」
 という話がある。

 ご存知の方も多いだろうが、これはない~~~。 チュンは、餌をくわえたままでも、いかようにも鳴ける。 生きものを、あまり馬鹿にしてはいけない。

 cf. さえずりもいろいろ





 実の詰まった、見るからに立派な米粒であれば、ものの一秒ともかからない。 ところが、中には、実が小さく、殻だけが堅いものがあったりした場合、苦労していることがよく分かる。 横回しにしたり、縦回しにしたり、割り口をさがしている。 だから、二三十秒以上もかかることもある。 何しろ好物だから、そう容易く諦めない。 ところが、これ以上努力しても、無駄と知れば、知らぬ顔をして、ポロッと捨てたりする。


 あまり割れ難いものが続くと、顎が疲れてくるのであろうか、まだ、満腹はしていないのに、横を向いて、受け付けなくなる。 普通、十粒ほど食べるのに、お前は信用できないと言っているのかも知れない。 チュンが自分で選べるものであれば、良い米粒か、悪いものか、見分ける能力を持っている筈だ。 現に、実の無い米粒を与えれば、一噛みしただけで捨ててしまう。







他人のもの奪うこと
 前にも言ったが、チュンは、私が差し出す餌も、貰っているとは思っていない。 くれとは、ねだるが、最終的には、奪い取るという気持ちでいるようだ。

 私が、一粒ずつ、食べやすいようにと思って、ちぎってやろうとしているものを、私のすきを見て、稲穂を奪いとることもある。 そして、だぁー、と逃げて行ったりする。 逃げるということは、他人のものを奪うことは悪いこと、と知っている証拠だろう。 そして、鳥篭の陰といった、安全な場所で、奪い返されないかと用心しつつ、振り返り、振り返りして、食べ始める。

 このとき、大声で、「チュン」 と叱ると、「チュッ チュッ チュッ ・・・」 (盗られるお前がわるいんじゃ、ワシのものに手を出すなよ、分かったな) と言い返してくるから、面白い。

 とにかく、稲穂に限らず、大きい方を奪い取るようだ。 そして、必ず逃げ出すから、このとき、「こらぁ チュン」 とかいって、取り返す振りをすると、余計に大慌てして、逃げ出すものだから、ついつい、面白がって、からかってしまう。


 稲穂を奪った場合は、本当は食べ難いものだ。 田圃の中であれば、稲穂も固定されているからいいが、稲穂だけでは、米粒をちぎり取ろうとすると、足ででも押えないかぎり難しいだろう。 米粒が千切れる前に、稲穂が動いてしまうからだ。





押さえて食べる
 今のところ、足で押さえて食べる知恵は、スズメにはない。 シジュウカラ は、その知恵を持っているようだ。 桂野鳥園で実際に観たことがある。 何かの種子を、動かないように、両足指で挟んで、その殻を割っていた。 また、ワシタカ類では、足を使うのは当たり前の技術である。


 その代わり、チュンは、稲穂を振り回すことを知っている。 その瞬発力は、すごいものがある。 これも物理の法則でいう、運動量保存の法則 (Ft=mv) を知っている証拠だろう。 それを応用している。 米粒も、瞬発的な早い動きには耐え切れず、引きちぎられてしまうから、偉いものだ。





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